「君たちはどう生きるか」からのメッセージ②〜あなたは生きていいし、生きる価値がある 〜

生まれてくる命、ワラワラ
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映画「君たちはどう生きるか」から受け取ったもの、その②です。

本記事はネタバレを含みます。ご了承の上お読みください。

その①はこちら↓

目次

私達は周りに守られ支えられている

自分がいかに恵まれていて、周りに守られ支えられているか、普段はあまり意識することがありません。

眞人はばあや達の食事を美味しくないとはっきり言い、看病してもらってもお礼の一つも言いません。

夏子が心配してばあや達と眞人を探しに来ても無視。

キリコに助けられ、食事を提供してもらってもお礼はなし。

でも子供ってこんなものかもしれません。
まだ広い視野を持っていないので、周りのことが見えないんですよね。

眞人を守る7人のばあや

お屋敷に仕えているばあや達は、眞人の世話をし、下の世界でも眞人を守ってくれます。

私達もこんな風に家族や周りの人達に守られています。
人形ばあやのように見守ってくれることもあれば、キリコのように危ない時は助けてくれたり、助言をしてくれたり。

誰かが保護して見ていてくれるから、子供は危険な目に遭うことなく生きてこれたのですね。

父の責任の取り方

眞人が同級生に怪我を負わされたと思った勝一は翌日学校に出向き、300円の寄付をして帰ってきます。

昭和初期の大卒初任給が80円程度だったようなので、300円は結構な額です。

そして眞人に「学校なんて行かなくていい」と笑顔で言います。

勝一は今後息子を学校に通わせない代わりに、お金を収めたわけですね。

ただ文句を言うだけでなく、地域や学校への配慮もしつつ眞人を保護しました。

親として周囲に対し責任をとってくれたこの行動に、眞人は気づいたでしょうか。

夏子の厳しい対応の真意

眞人が産屋に入った時、夏子は眞人に厳しい態度をとりました。

あれは本心から言ったのではなく、眞人を守ろうとしたのではないでしょうか。

ここにいてはいけない、あなたは現実世界に生きるべきだと。

産屋の内部に下の世界と同じ石があり、とても安全な場所とはいえない雰囲気です。

夏子は眞人を守るために自分と子供を身代わりにするつもりだったのかもしれません。

他者を食べさせ養うキリコ

下の世界でキリコは巨大魚を釣り、さばいて黒い影やワラワラに食べさせてあげます。

黒い影は殺生できず、食べ物をもらいに来るだけ。
ワラワラは上の世界に生まれ出る命で、魚の内蔵を飛ぶためのエネルギーにします。

キリコが食料となる生き物を取って来てさばき、他者に与えて命を養っています。

まるで親が働いて子供に食べさせているかのようです。

また、社会でこの役割を考えたとき、
漁師さんや食肉加工場で働く人達のことが思い浮かびました。
彼らの仕事のおかげで、スーパーできれいにカットされた魚や肉を買うことができます。

黒い影は、消費するだけの存在を指しているのかも?

私達はどう生きているか

私達は赤ちゃんの頃から親に世話をされ、養ってもらい、守られ助けられながら大人になりました。

今も周囲の人達に直接的、間接的に助けられて生きています。

食材一つとっても、肉や魚を獲ってきてさばき卸す人達、その他の食品を製造する企業とそこで働く人達、商品を運ぶトラック運転手、スーパーの店員、

多くの人が働いてくれているおかげで、私達はようやく食材を買うことができます。

私達は周囲との関わりの中で生きている、逆に言えば周囲の存在なしでは生きられないことを感じます。

では、こうして周りの世話になり、守られ支えられている自分は、どんな生き方をしているでしょうか。

鳥のフンの意味

鳥が出てくるシーンで、なぜかフンまで描いています。

アオサギが眞人の部屋の窓に来て、フンをべったり垂らして去っていく。
インコの大群がフンを撒き散らしながら飛んでいく。

なぜ排泄物をわざわざ描いているのか。

インコ達の行動を見ると、いつも食事の準備ばかりしています。
ただ食べるために働いて排泄するだけの存在を表しているように感じました。

また、アオサギは大叔父の命令で眞人を塔に連れて来ました。
ペリカンもインコも大叔父に連れて来られたようです。

鳥たちは上に命令されたことをこなすだけの存在、を表している?
とは考え過ぎでしょうか。

様々な生き方

その①「2-2. 悪に見える一面」でもそれぞれ生き方や事情があることについて書きましたが、
異世界に住む存在にも様々な生き方を描いています。

殺生できずキリコに養ってもらっている黒い影。
外の世界に出られない、飢えたペリカンの大群。
食事の準備に一生懸命な、増えすぎたインコ達。
上には感動するような美しい世界があり、大叔父一人が住んでいる。

働くことができず、ただ養ってもらっている。
とにかく食べていかなければならず、不本意な状況から抜け出せない。
食べることが生きる目的になってしまい、大勢の中でただ働いている。
外は悪意に満ちていると思い、ずっと引きこもっている。

このような生き方をしている場合、何か考えなければならないことがある、
と言われているような気がします。

死を見て生の価値を知る

他に興味深いのは、生と死を同時に見せているところ。

お葬式のシーンなど一切なく、母の死を見せた直後に継母の妊娠で生を描写しています。

ワラワラが生まれようとする時、ペリカンがやって来て食べてしまう。
生まれる命と、生まれることもできず死ぬ命を一度に見せています。

夏子が入った産屋の中は、命を産み出すと同時に死ぬことを想像させます。

生だけを見せて「生きるのは素晴らしいことだよ」と言っても伝わらない。
死があることで生の大切さが分かる。

今あなたが生きているのは奇跡のようなもので、
あなたの命はかけがえのない大切なものなんだよ

死と生の描写にはこんなメッセージが込められているのではないでしょうか。

生きる力となるもの

この作品のために制作された主題歌「地球儀」にも大切なメッセージが込められていると思います。

米津玄師 – 地球儀 Kenshi Yonezu – Spinning Globe

この世界に生まれたことは素敵なこと。

傷つくこともあるし、自分が誰かを傷つけることもある。
困難な出来事が起こり、苦しい思いをする時もある。

それでも愛する誰かや大切な何かがあるから、乗り越えられる。

生きることへの希望を歌っているように感じました。

宮﨑監督が伝えたかったこと

米津玄師さんが主題歌制作の話を受けた時、宮﨑監督がこう語っていたそうです。

自分が子供の頃に「果たしてこの世に生きてていいんだろうか」という迷いや暗いものを抱えて生きてきたことをすごく覚えている。だから映画を通して、その頃の自分や、今の時代を生きているその頃の自分と同じ世代の子供たちに対して、「この世に生きてていいんだよ」「この世は生きるに値する」ということを伝えたいという話もされていて。

「米津玄師「地球儀」インタビュー|「君たちはどう生きるか」主題歌制作の4年を振り返って」音楽ナタリー

あなたは生きてていいし、この世は生きる価値がある。

しかしその価値を得るには、自分自身と向き合い、どういう自分でありたいか、どう生きるかをきちんと考えなければならない。

忙しい日々に埋もれて生き方について考えないままでいると、生活のために働くだけの人生になったり、生き方自体を忘れてしまうかもしれない。

一度しかない人生を価値あるものにして、大切に生きなければなりませんね。

自分はどう生きていきたいかを考え直す良いきっかけをこの作品からもらいました。

キャラクター画像:スタジオジブリ提供「君たちはどう生きるか」作品静止画

参考:

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